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1. 時給最大615円の差がつく?中小企業も無視できない賃金制度改革
静岡県島田市に本社を構える「ヤマシタ」は、福祉用具のレンタルとリネンサプライ事業を手がける企業です。パート従業員約1000人を抱える同社が、2025年に導入したのは、年功制を廃止し「技能」と「協調性」で時給を決める新しい評価制度です。この制度では、評価点数に応じて最大615円の時給差が生まれる仕組みとなっており、全国的に深刻な人手不足が続く中、今後多くの中小企業が参考にすべき取り組みと言えるでしょう。
2. 福祉用具レンタル大手「ヤマシタ」の概要と取り組み背景
ヤマシタは、福祉用具のレンタル・販売を主力事業とし、福祉施設や病院・ホテル向けにリネン類(タオル・シーツなど)を供給するリネンサプライ事業を全国展開しています。国内に複数の工場を持ち、2026年9月には奈良県安堵町に同社最大規模となる新工場の稼働を予定しています。業績も堅調に伸びている中、採用難や人材の定着に課題を感じ、従来の「勤続年数重視」の賃金制度から「働きに見合った処遇」への転換を決断しました。
3. 従来の年功序列型賃金制度の限界
これまでは長く働くほど時給が上がる仕組みで、一定の公平性はありました。しかし、勤続年数だけで賃金が決まると、働きぶりや成果に関係なく処遇が決まってしまい、モチベーションの差や不満を生み出しやすくなります。また、新しく入った人材が評価されづらく、能力のある人材の獲得や定着率の向上を阻害する要因にもなっていました。人手不足が深刻化する中、こうした従来の制度では優秀な人材を確保できないという危機感が制度改革の背景にあります。
4. 新制度の評価軸①:技能(スキル)重視の評価ポイントとは
ヤマシタでは、作業における「技能」を複数の項目で評価します。具体的には、作業方法の理解度、作業の正確性、目標達成の度合い、課題解決への取り組みといった要素が対象となります。これらを5段階で点数化し、重要度に応じて加点の重みを変えています。実際に現場でのパフォーマンスが反映されるため、頑張りが賃金に直結しやすくなりました。この仕組みにより、経験の浅い従業員でも、高い技能を身につけることで早期に処遇を改善できる道が開かれています。
5. 評価軸②:協調性も賃金に直結する新しい考え方
もう一つの評価軸が「協調性」です。例えば、注意された後に行動を改められるか、周囲と連携して作業に取り組めるかといった点が評価されます。一見、数値化しにくいように思えますが、「チームワーク」や「改善意識」は工場の生産性向上に直結するため、ヤマシタはあえてここを評価対象に加えています。個人の技能だけでなく、職場全体の雰囲気や効率を高める姿勢も正当に評価されることで、より良い職場環境の構築を目指しています。
6. 点数によって最大615円の時給差がつく仕組み
技能・協調性の合計点数によって、募集時の標準時給に対し時給が増減する仕組みとなっています。評価によって最大615円の時給差が生まれる設計です。もちろん、最低賃金は下回らないように設計されていますが、働き方によって時給に大きな差が生まれる仕組みは、従業員の意識改革にもつながります。能力と努力が正当に評価される環境は、従業員のモチベーション向上と優秀な人材の獲得につながることが期待されます。
7. 制度は定期的に見直し!働き方のPDCAを回す環境へ
評価は定期的に行われ、その結果が給与に反映されます。このように定期的に評価が見直されることで、一度の評価に固執せず、常に行動改善や努力を続ける仕組みが構築されています。働く側にとっても「次がある」という前向きな気持ちを維持しやすく、継続的な成長を促す環境が整っています。
8. 評価者は誰?制度運用のリアリティと公正性の確保
評価を行うのは現場を熟知した社員の現場責任者です。作業を日常的に見ているからこそ、正当な判断がしやすいという利点があります。ただし、評価者による主観のばらつきや属人化といった課題を防ぐために、評価項目の明文化と評価者トレーニングも重要です。公平性と透明性の確保が制度成功の鍵を握ります。従業員が納得できる評価プロセスを維持することで、制度への信頼を高めることができます。
9. 社労士の視点:中小企業が制度を導入する際の注意点
このような評価制度は、導入前の「制度の目的」や「評価基準の見える化」が欠かせません。従業員に対して、なぜこの制度を導入するのか、どのような基準で評価されるのかを丁寧に説明し、理解を得ることが重要です。また、従業員との信頼関係を保つためには、評価結果へのフィードバックや異議申し立ての仕組みも必要です。加えて、制度を定着させるには、経営陣の本気度も問われます。形だけの制度では効果が出ず、かえって不信感を生む可能性があります。導入後も定期的に制度を見直し、改善を続ける姿勢が求められます。
10. まとめ:人材確保・定着・生産性UPのための処遇改善とは
ヤマシタのように、能力や姿勢を正当に評価し、賃金に反映する制度は、まさにこれからの時代のスタンダードになり得ます。年功序列から脱却し、働きぶりを適切に評価することは、従業員のモチベーション向上だけでなく、優秀な人材の確保にも直結します。中小企業でも、簡易な仕組みから始めてみることで、働きやすさややりがいが向上し、結果的に人材確保・定着・生産性向上へとつながっていくでしょう。まずは自社の現状を見つめ直し、評価・処遇の仕組みを一歩ずつ見直してみてはいかがでしょうか。人材こそが企業の財産である今、適切な評価制度の構築は経営戦略の重要な柱となります。
社会保険労務士として、人事評価や賃金制度の見直しに関するご相談も承っています。お気軽にお問い合わせください。